言いたい放題!KO-1's Blog

古今東西の好きな音楽などを中心に徒然なるままに・・・

SLIM and SLAM デビュー準備完了!

前回はスリム・ゲイラードの初録音と自己名義 (SLIM and SLAMとして) の初録音を紹介しました。

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おさらいをしておくと・・・

フランキー・ニュートンの楽団でヴォーカリストとしての初録音
1937.04.15. New York
M-402-2 I'VE FOUND A NEW BABY [VARIETY 571]
M-403-2 THE BRITTWOOD STOMP [VARIETY 571]
M-404-2 THERE'S NO TWO WAYS ABOUT IT [VARIETY 550] (*)
M-405-2 'CAUSE MY BABY SAYS IT'S SO [VARIETY 550] (*) 
青文字(*)がついたものが、スリム・ゲイラードがヴォーカルで参加した曲
曲名の後の [  ] 内が発売されたレコードのレーベルと番号

自己名義 (SLIM and SLAMとして) での初録音
1938.01.19. New York
22318-2 THE FLAT FOOT FLOOGIE
22319-1 CHINATOWN, MY CHINATOWN
22320-2 THAT'S WHAT YOU CALL ROMANCE
22321-1 LADY BE GOOD
緑文字の曲は当時未発売で後に復刻された曲

Tom Lord "The JAZZ Discography"で別テイクとされているものは事実確認されていないようなのでオミットしました。

1月19日の録音の4曲は当時1曲も発売されていないので、もともと発売を前提としないオーディション用あるいはテスト用の録音と考えた方がよいかもしれない。

前回のブログ更新後、スリム・ゲイラードの経歴についていろいろと調べたが、相変わらずよくわからない。

1930年代半ばにはプロのミュージシャンを目指してデトロイトからニューヨークへ。ギター奏者、タップダンサーとしてセミ・プロのような活動をしていたようだ。
本人曰く、メジャー・ボウズ・アマチュア・アワー*1に、毎回違う楽器を演奏したり、演目を変えたり、時には別の名前で頻繁に出演していたという。
相棒となるスラム・スチュアートは、「ザ・ビッグ・アップル」(クラブ?)でジャムセッションに参加していたプロ志向の強いベーシストだったが、「メジャー・ボウズ」という有名ラジオ番組に出演できることを餌に引きずり込んだ。
後に大ヒットとなる「フラット・フット・フルッジー」も、すでにレパートリーとして披露していたようで、ニューヨークのDJマーティン・ブロックが目をつけ声をかけてきた。マーティン・ブロックはスリムとスラムのマネージャーになり、ヴォカリオンとの録音契約にこぎ着けたようだ。*2

そして、80年前の今日、1938年2月17日に行われた録音が実際にレコード (当時はSP盤)として発売されることになる。

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レコーディングのデーターは以下のとおり

1938.02.17. New York
Slim Gaillard(guitar,vibraphone,vocal), Slam Stewart(bass,vocal), acc by Sam Allen(piano), Pompey "Guts" Dobson(drums)
22318-4 FLAT FEET FLOOGEE [Vocalion 4021]
22319-5 CHINATOWN, MY CHINATOWN [Vocalion 4021]
22320-3 THAT'S WHAT YOU CALL ROMANCE [Voclion 3981]
22441-2 TI-PI-TIN [Voclion 3981] 

1月の録音と3曲は同じだが、"LADY BE GOOD"に代えて、"TI-PI-TIN"が録音されている。1938年のビルボード誌を何冊か見てみたが、この"TI-PI-TIN"という曲はシート・ミュージック (楽譜) の売り上げチャートで何度も1位に登場しているので、かなりの人気の曲。レコード会社としては賢明な判断といえるでだろう。(ただし、さすがはスリム・ゲイラード、まともには演奏しておらず、他の楽団などの同年の演奏と比べると全く別の曲に思える。)

レコード番号の順に発売されているのであれば、
ファースト・シングルが,
Vocalion 3981 TI-PI-TIN / THAT'S WHAT YOU CALL ROMANCE"

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セカンド・シングルが、
Vocalion 4021 FLAT FLEET FLOOGEE / CHINATOWN, MY CHINATOWN"

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ということになる。

そして、セカンド・シングルの「フラット・フット・フルッジー」が1938年4月9日付けの米国ビルボード誌のチャートに初登場し、最高2位まで上り詰めるヒットとなる。

「フラット・フット・フルッジー」の曲名表記について、発売されたSP盤のラベルの表記を尊重しました。

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"THE CHRONOGICAL SLIM GAILLARD 1937-1938"CLASSICS RECORDS 705 (1993年発売・FRANCE)
スリム・ゲイラードの初録音からSP盤で発売された曲(本文中青字の曲)が録音順に収録されています。
すでに廃盤のCDですが、ヨーロッパのコレクター・レーベルの多くは早くからネットに移行しており、スリム・ゲイラードの諸作もほとんどがダウンロード版の購入やストリーミング可能です。

「フラット・フット・フルッジー」に関しては書きたいことは山ほどあるので、またいずれ・・・

*1:ラジオ放送された素人参加番組、開始当初はわからないが、スリム・ゲイラードが出演していた頃はすでにブッキング・エージェントのいるやらせ番組となっていた。

*2:レコード・コレクターズ」1986年1月号に転載されたダグ・ロングによるインタビューを元にしています。

http://hw001.wh.qit.ne.jp/ko-1jive/index.html